伐採したままの桐の原木から、桐たんすの材料となる桐板へと変える「製板」という工程。数ある桐たんす作成の工程は約10項目に分類することができ、この「製板」工程はその一番手を担います。製板とはどのような作業があり、どんな職人たちがそれを行っているのでしょうか。福島県耶麻郡磐梯町にある提携製板工場でのお仕事を取材しました。
直径約70cm、全長約3mの桐の巨大な丸太。この大きさでだいたい樹齢30年だそうです。これを作業場の「帯のこ」と呼ばれる機械を使って切り出していきます。専用の台車に木材をセットし、のこぎりを作動させると作業場に轟音が響き渡り、台車を運転する職人が細かなスイッチ操作で台車を進ませます。のこぎりが触れると、木材は何の抵抗も無いかのように綺麗に切断されていきます。見る見るうちに数十分ほどで大きな丸太がぴったり同じ厚みの桐板に切断されました。この作業中は会話も出来ないほど大きな音が響くので職人たちは少し離れた距離から細かな身振り手振りで意思を伝え合いますがこれぞまさに阿吽(あうん)の呼吸。本当に信頼しあっている職人同士でないと、これほどスムーズに作業は進まないはずです。
ところで、作業を開始して7、8分が経過し、丸太が4分割された辺りで、それまでじっと作業を見守っていた社長が職人に近づき、何事かを指示しました。職人はそれに真剣な表情で頷くと、木を三角に起こして製材していきます。この方法は柾目取りといいます。このように切り出すと、木目が柾目になり、反りや収縮などの木材の狂いが少なくなる効果があるのです。
このようにして、桐たんす完成への初めの一歩である製板は完了します。時間にすると数十分のことですが、1本1本様々なクセがある原木に対し、そのクセを上手く生かすように製材していくのは代々受け継がれてきた技術を持つ職人でなければ出来ないでしょう。
こうして、原木(丸太)から板材に加工された桐は会津塩川の工場に運ばれ、次の工程を待つことになります。