古い箪笥の削り直しを最初から最後までレポートしていきます。今回紹介いたします事例は今まで受けました削り直しの依頼の中でもさほど状態は悪くない一般的な「桐たんす再生」の依頼です、昔の桐タンスは『三方桐』といって、箪笥の表面、右面、左面が桐で後ろや、なかなか見えない中のほうは杉などを使っていた箪笥が多いのですが、このタンスはそういった部分も含め、全て桐でできていました。
傷や凹みがあることはるのですが、そこまで多くはなく、比較的綺麗な状態でした。 通常の削り直しの場合は、金具を新しいものに変えるのが通常ですが、今回のお客様は金具も非常に気に入っていらっしゃったので箪笥同様、金具も新品同様に直すこととなりました。というわけで今回の依頼については桐箪笥職人だけではなく、会津松本の金具職人も協力していくことになりました。それでは削り直しの様子をレポートしていきます。
見ていただけるとわかるとおりに遠目からはそんなに大きな破損はないのですが、引き出しの中や、後ろ板などは結構傷んでいます。
箪笥の側面の表面です。昔は今のようなボンドがなく米を練って接着剤の代わりに使っていたので、長年使っているとくっつけたところからひびが入ってきます。現在は特殊なボンドを使用していますので、長年使っていてもこういう状態にはなりません。
箪笥の後ろ側です。側面同様くっつけたところからひびが入っています。前からは見えないところですがこれも綺麗に修復します。
引き出しの中の底板です。これもひびが入っています。
引出しの表面です。小さい子傷がたくさん入っています。かんなをかけてきれいに仕上げます。
箪笥の一番下の本体を支えている台輪です。ありがちなパターンで角が欠けています。
箪笥本体の角もかけています。台輪同様よくありがちですがこれも綺麗に修復できます。
では、まず引出しの底板から修復していきます。御覧のとおりに大きなひびが入っています。まず、ひびの周りも余裕をもって大きく特殊な機械で削り取っていきます。
削り取るとこういう状態になります。綺麗に長方形の形に削り取ります。
削り取った面積よりも少しだけ大きくカットした桐に鉋をかけ、ぴったりの大きさに仕上げます。簡単そうですが、完璧な仕事は何十年も桐箪笥を作り続けてきた職人にしか出来ません。
本体の後ろ板も引出の底板同様、特殊な機械で長方形に削り、
1ミリの隙間もなく桐をはめ込みます。
本体のひびにも同じ作業をしていきます。
本体の、側面に細いひびが入っています。こういう場合は『のみ』というカッターの様な刃物でひびの太さを均一にします。
そして、均一になったヒビに、三角に切った桐を角のほうから押し込んでいきます。そうすることで隙間なくひびが埋められます。
本体の一番下の台輪と呼ばれている部分です。左の縮小画像を見ただけでも角がきれいに欠けてしまっているのが、おわかりになると思います。
まずかけている部分を正確に三角にカットします。
そして、カットした三角よりも少し大きめにカットした桐をはり、乾いてからかんなで削ると、画像のように綺麗に修復されます。
大輪同様、本体の天板も欠けていたの、今回は欠けている部分が大きいので先ほどのように三角ではなく長方形にカットします。そしてカットした部分よりも、やや少し大きめにカットした桐材を貼り付けます。
かんなをかけてに周りになじませると綺麗に修復されました。
本体の表面に小さな凹みがあります。会津松本は徹底して修理致しますので、このような小さな傷も元通りに戻します。
会津松本の昔から伝わる修理法です。水分を多めに含ませたタオルを凹みあるところに合わせ、家庭用アイロンで一気に温めます、すると水蒸気が桐に浸透して水分を含み、傷が持ち上がるという仕組みです。
凹んでいたところが元通りに戻りました。この要領で、全体的に子傷を治していきます。
大きな傷を桐で埋め、子傷を治した状態です。画像を見ていただくとわかりますが、新しく埋めたところがはっきりとわかると思います。
側面です。
後ろです。
そして、さらに傷を残さないために全体にかんなをかけます。するとこの画像のようにまったく新しい状態に戻ります。ここでタンスは『桐箪笥職人』から『塗装職人』の手に託されます。
今回のタンスは焼き仕上げです。まず、特殊なバーナーで箪笥の表面を焼きます。全体にムラなく均一に焼き色をつけるよう慎重に(もちろん、燃えてしまわないようなスピードで)作業していきます。
桐の表面についた煤を傷をつけないように綺麗にとっていきます。
そして、砥粉(砥石の粉)と水を混ぜ合わせたものを表面に塗っていきます。
木目に沿ってむらができないように塗っていきます。簡単に思われるかもしれませんが、この作業にもかなりの技量が必要とされます。仕上げ段階でのミスはそれまでの作業を行った職人にも迷惑がかかってしまいます。
時間をおいたら綺麗な布を使って同じ力でふき取っていきます。
このように綺麗な木目がでて美しい塗装が完成します。
塗装が完成したらその塗装を守るために、表面に『ろう』を塗っていきます。光沢がでて、湿気や汚れから箪笥を守る役目です。左の画像のように石鹸のような大きさの『ろう』を使用しています。
一定の力で、一定のリズムで均等にむらなく塗っていきます。
左の画像で御覧いただける様に桐箪笥に新品同様の輝きが戻ってきました。そしてこのタンスは最後の仕上げ「金具修復&付け」のために『金具職人』の手に渡っていきます。
まず、長年使われて曲がっている金具を特殊な金づちでまっすぐに直していきます。
金具も再生するという技術は他の業者さんではあまり行っておりません。金具再生の手順の紹介は申し訳ありませんが、今回控えさせていただきます。我社の長年培ってきた技術では、金具も新品同様に綺麗になります。
一度外した部分と同じ部分につけ直すとすぐに緩くなり、長年使っているとガタがきますので金具を抜いた穴も元通りに埋めます。そうすることによって何十年も綺麗な状態で使っていただける『桐箪笥』になります。
これですべての工程が終了しました。画像のとおり新品の様な状態になります。
金具も新品同様になることによってこの箪笥をお買い求めいただいた時の様子が蘇ってくると思います。
ご自宅に古い箪笥がございましたら是非、わが社にお任せ下さい。